なぜ、話を真摯に聴くのか?②(最終話)

前回からの続きです。

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出版社:NHK出版新書
著者:友田明美(小児神経科医)

NHKプロフェッショナル仕事の流儀でその活躍ぶりが紹介され、初めて存在を知りました。

友田先生は世界で初めて、マルトリートメント(不適切な養育)をうけて育った人達の脳の研究を始めた先生です。アメリカのハーバード大学のマーチン・H・タイチャー 氏との共同研究です。

18歳~25歳のアメリカ人男女およそ1500人に聞き取りを行い、体罰を受けた23人を選びMRIを使い脳の撮影、検査を行いました。

その結果、明らかにマルトリートメントを受けなかった人達に比べて脳の萎縮・変形がわかりました。

私は、プロフェッショナル仕事の流儀で放映されたマーチン・H・タイチャー 氏の言葉がとても印象に残りました。その言葉とは

「当時は心に傷を負った人に”20年前のことを引きらずに前向きに生きなさい”と言っていましたが、このような接し方では傷痕が残ることがわかったのです」

私はこれをテレビで見ていた時に、指示やアドバイスがなぜ効果がないのか、なんとなく分かりました。指示やアドバイスでは、萎縮・変形した脳はなにも変わらないのです。

番組では、とにかく真摯に子供の言葉に耳を傾けて、良いところを褒める。ことあるごとに褒める。そういう子供の脳を経過観察していくと、反応の鈍かったところ、休眠していた脳の部分の血流が良くなり脳が活性化し始めるのです。

脳が活性化すると、萎縮・変形していた脳が成長、進化し始める。私はこれはまさしく”傾聴”そのものだと思いました。

番組内でも言っていましたが、時間がかかる子供はかかります。1回や2回で良くなることなんてないそうです。それでも、子供とその親を信じて話を聴き続け、褒め続ける。

そうやって時間をかけて心の傷痕(脳の萎縮・変形)を癒していくのではないでしょうか・・・・。まだまだ、未知な部分が多く科学的に立証できているというにはデータが足りないようです。

しかし、入り口は違えど、友田先生がやろうとしていることも、私が傾聴でやろうとしていることも同じだと思いました。

なぜ、話を真摯に聴くのか?それは

脳の神経回路の可塑性をうながし、脳を成長・進化させ新しい自分(人格の変容)になって、新しい人生を歩みだすために

と、昨日の繰り返しになりました。

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